デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り 　64

デンマークのCOVID-19　その5

先回その4で、ご報告したように、昨年12月初頭からイギリスの異種株の蔓延を警戒する2回目のロックダウンが始まりました。　ようやく今年3月末から感染が落ち着いてきたので、4カ月ぶりに規制がゆるやかになってきました。　その間2回も規制期間が延長されたため、若者を中心にコペンハーゲンやオーフスで政府のコロナ規制に反対するデモが数回ありました。　コロナの特別措置法では、デモで警官に暴力を振ったり、政府に挑発的な発言をした人の罰則は2倍になりました。　規制緩和の一番大きい理由は、昨年12月クリスマスから始まったコロナワクチン接種が順調に行き、高齢者の死亡者や病院の入院者が減少したことです。　政府は異種株の感染を抑制する強い政策の中で、死亡率が高い特別養護老人ホームで暮らす高齢者を中心にワクチン接種を急ぐ方針を取りました。　政府は4社のワクチンを使って7月末に16歳以上の国民の接種終了を目指していました。　しかし、アストラゼネカのワクチンや一回しか接種が必要でないジョンソン＆ジョンソンのワクチンがまれな血栓を起こすことが分かり中止になりました。　ファイザー社とモデルナ社の2種でしか接種ができなくなり、接種期間が１−4週間延びて、8月29日に終了する予定です。　すでに購入したアストラゼネカとジョンソンジョンソンのワクチンは、リスクを承知して、8月末まで接種の順番を待てない希望者に接種される予定です。　これは国の大規模な会場で行われているワクチン接種とちがい、プライベートの医療会社が接種を担当するとのことです。
コロナワクチン接種は国立血清学研究所（SSI）からPCに電子文書で連絡が来ます。　SSIは接種計画の年齢を細かく5歳間隔で分けています。　ですから計画表をみれば、自分がいつSSIから連絡くるのか予測がつきます。　コロナワクチン接種のサイトで希望する接種場所、日時、時間を予約します。　同時に2回目の接種日も決めます。　接種前日にスマホに日時を忘れないようにという催促がきます。　当日は健康保健カードを持って行くだけです。　問診や熱を測ることもなく、接種する前に看護士からアレルギーのことを聞かれます。　その後15分別棟で休憩して終了です。　非常に手際が良く、会場に入ってから約30分で終わります。　皆が心配している発熱、倦怠感、筋肉痛などの副作用が出ても数日で解消するので、心配して家庭医や夜間急病センターに連絡しないようにという指示です。　5月中旬に16歳〜19歳、45歳〜49歳向けに連絡が行き接種が始まります。　最終8月は30歳〜34歳です。

社会活動がゆるやかになった二つ目の理由は、いつでも無料で受けられるPCR検査や抗原検査の充実です。　毎日約500人から約900人の感染者が報告されています。　クラスターや感染が多い地域では、教会教区や自治体ごとに学校閉鎖があり、積極的に住民にPCR検査が推奨されます。　デンマークは人口比でPCR検査の数が世界でも多い国の一つです。　人口は550万人ですが、毎日約20万件の検査があります。　PCR検査は要予約制で、人口6万のヘルシンガーに4か所あります。　簡単テスト呼ばれる鼻に綿棒を通して検査する抗原検査所は2か所あり、早朝6時から夜10時まで開いています。　検査結果が陰性ですと活動範囲が広がり、これまで閉鎖されてきた施設などに行くことができます。　デンマーク語学学校に行っている知人は週一回の対面授業の時、72時間以内の抗原検査の陰性証明書が必要です。　中学校でも週2回のPCR検査があります。

5月10日現在すでに国民の10％が2回の接種を終了しました。　31％が一回目の接種を終わっています。　私も4月中旬に一回目の接種を終わり、2回目は5月中旬に受けます。　2回の接種を終わった人は政府が発行するコロナパスをスマホにダウンロードできます。　コロナパスに厚生省と警察庁の表示があり、本人の氏名、住所、ワクチンの接種日付、種類が記入されています。　パスは2回目の接種日から180日間有効です。　72時間以内のPCR検査と抗原検査が陰性の場合も結果をスマホにダウンロードできます。　コロナパスや陰性証明書は水戸黄門の印籠のようなもので、レストランの室内で食事、フィットネスクラブ、美術館、博物館、図書館などに入場する時に必要です。　レストランの外に座って食事をしたり、コーヒーを飲む時にはコロナパスや陰性証明書は不必要です。　最近知人との会話はSSIからコロナワクチン接種の招待状が来たとか、まだ来ないとか、ワクチンを打ったなどという接種のことが話題になります。
コロナパスがあると感染が落ち着いたスペイン、ギリシャへの旅行ができ、帰国後空港でPCR検査を受けたり、自宅で自主隔離をする必要がありません。　これから夏休み時期にかけてEU各国でコロナ接種が進むと、国を越えた活動に色々と便宜が図られるでしょう。　まだコロナワクチン接種万々歳ではなく、室内や野外で集まれる人数制限があります。　マスクは国民が接種を終える秋まで必要です。　毎年夏に数万人の規模で行われる野外コンサートなどは、感染拡大予防のために2年続けて中止です。　いまもって仕事で通勤する人以外は、フェリーで20分しかかからない対岸のスウエーデン（ヘルシンボー）への自由な往復はできません。

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写真は全て小野寺綾子氏撮影
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