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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  56

「Ghetto と Ditto ゲットーとローマハウス」

2019/11/23小野寺綾子 / ヘルシンガー


GhettoとDitto ゲットーとローマハウス
先回デンマークのゲットーの記事の中でヘルシンガーにも犯罪率と失業率の高さ、低所得や外国人住民の多さなど社会的な問題のあるアパートが一か所あると書きました。 ヘルシンガー市は、ゲットーの汚名返上のためにそのアパートに住んでいる約1000人の住民の内100人近い住民の入れ替えを計画しています。 しかし、長年住んでいる住民はアパートに愛着があり、引っ越すことで住民同士のつながりが断ち切られるので、大反対をしています。 ヘルシンガー市に限らず、ゲットーと呼ばれる社会的な問題があるアパートを抱えている自治体では、住民に新しい住居を斡旋し、引っ越し代も負担するので立ち退き案を提示しています。 全国規模では約11000人の人が自由意志、半強制的に住居を変わるプロジェクトになるとのことです。
12月1日に住宅省から新しいゲットーリストが発表される予定です。 もしこのリストにヘルシンガー市のアパートが2年連続で入っていれば、市は新たな改善策を示さなければなりません。

秋口にヘルシンガー市のローカル新聞にこの問題を抱えたアパートの記事がありました。 その記事の終わり部分に、アパートから直線距離で500メートルも離れていないローマハウスの住民と簡単に比較したちょっと面白い記事がありました。
記事には、『ローマハウスの敷地に入ると、レンガ壁に囲まれた同じような家が並んでいる。 家の周りの草木は自然に伸びるように任せている。 住宅としては少し高い家に住む80%のローマハウスの住民の職業はたとえば建築家など創造的な仕事をしていて、市に高い率の税金を納めているだろう。 住民の60%はポリチケン(Politiken)紙やインフォマション(Information)紙の新聞を読んでいることだろう。 住民は平均的な国民の3倍以上も地球温暖化を憂鬱している。 ローマハウスはもちろんGhettoゲットーではないが、Dittoデットー(同一という意味)だ。 つまり、この住民の80%は、自分は隣近所の人と似た同じ種類の住民だと思っているからだ。 その点ゲットーの住民は多様だ』と書かれています。

この記事を書いたのは、70代のコラムニストで、生活スタイルを分析したり、宣伝広告代理店に勤めていた男性です。 1990年代にテレビ番組「Kender du typen」という今でも人気が継続している番組に出演していました。 番組では出演者がタレント、音楽家、俳優、作家などいわゆるその分野で知られた人の家を訪れ、インテリア、洋服棚、台所、車など持ち物を観察して、どのようなタイプの人が住んでいるのか推測するのです。 番組の最後にそこに住むご本人が登場します。
新聞記事の内容は、すべて当たっているわけではありませんが、生活スタイルを分析する人の記事なので、なるほど外からローマハウスの住民はこんな風にみられていると思わせる点があります。
  ローマハウスはデンマークを代表する建築家の設計であり、建物の外見からしてヘルシンガー市では特別な場所です。 住民は自然に囲まれた個性的な住宅が気に入ったので、引っ越してきたという考えを持っている人が多いです。 ウッソンはローマハウスの草木はデンマークの自然のようにという考え方がありました。 もちろんランドスケープデザインナーをアドバイザーに迎えていて、どんな草木が良いのか選定しました。 今でも、その考えは継続しており、好き勝手に木を植えられません。 広い自然があるのだから、養蜂をしてみてはと言うアイデアがでています。(言いだしっぺは主人です。)
以前は建築家やデザイナーが数人住んでいましたが、退職したり引っ越したりして、現役の建築家はいません。 住民は教師、警察官、事務職、保育士、看護師、助産婦、医師、公務員、管理職、金融関係など職業は様々です。 最近牧師夫妻が引っ越して来たと聞きました。 年金者も多く、住民の36%は独り住まいだという情報があります。 外国人は私一人だけで、残りはデンマーク人です。

60戸の家の中をすべて訪れたわけではありませんが、室内にはたいていPHのランプ、デンマークのクラッシックなデザイン家具が置かれ、壁に趣味の良い絵が掛かっています。 インテリや家具は、その人の収入や生き方を表しているといっても過言ではありません。 期待を裏切らず、そのままインテリアの雑誌にしても良い住居環境に住んでいます。 超金持ちはいませんが、住民の生活、経済状況はとても似ています。
住民の食事会などの時は、おしゃれをして、きちんとした服で参加します。 男性、女性共グルメな人が多いです。 話してみると良く海外旅行に行っているし、ユトランド半島に別荘を持っていたりと行動範囲が広いです。

どんな新聞を読んでいるかについては、パーセント率はともかく、多分当たっているかと思います。 デンマークには全国紙がなく、地域で読まれる新聞が違います。 近所や我が家でもポリチケン紙(創刊1884年)というコペンハーゲンとシーランドを中心に発行している急進進歩的な新聞を購読しています。 新聞は左派系、内容はラデカルです。 土曜、日曜に文化、ルポルタージュ、書評、旅行、健康、生活などの独立したセクションがあるので、8万部ほどの発行があります。 建築、映画や書評の批評記事は影響が強いです。
インフォマション紙は、1945年創刊の発行部数が2万部と小さな新聞です。 1943年のレジスタンス運動の新聞が元になっているので、内容はリベラル、左派です。 コペンハーゲンでも高額所得者層が住む地域では保守系新聞のベアングスケ紙(創刊1784年)が読まれています。 ゲットーと呼ばれるアパートの住民は、ローカル紙やタブロイド紙を読んでいるでしょう。 デンマークではインターネットの普及でテレビを持たず、新聞も購読しない人が増加しています。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

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■ 正式名はノイサムヘズという1964年に作られたアパートとその周辺。

■ 正式名はノイサムヘズという1964年に作られたアパートとその周辺。

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本、オペラハウスの模型、ウッソンのサイン入りのオペラハウスのワインなど細々したのが、ガラスケースに展示されている。

■ 正式名はノイサムヘズという1964年に作られたアパートとその周辺。

■ 正式名はノイサムヘズという1964年に作られたアパートとその周辺。

■ ベランダには住民の母国のテレビを見るためのアンテナが多い。

■ ベランダには住民の母国のテレビを見るためのアンテナが多い。

■ ローカル紙に載ったゲットーとローマハウスの記事。記事の下にコラムニストの写真がある。

■ ローカル紙に載ったゲットーとローマハウスの記事。記事の下にコラムニストの写真がある。

■ 秋の日差しが黄色い壁に当たる、ローマハウスの風景 1。

■ 秋の日差しが黄色い壁に当たる、ローマハウスの風景 1。

■ 秋の日差しが黄色い壁に当たる、ローマハウスの風景 2。

■ 秋の日差しが黄色い壁に当たる、ローマハウスの風景 2。

■ ポリチケン紙の表紙と別なセッション記事。

■ ポリチケン紙の表紙と別なセッション記事。

■ 夏にあったローマハウスの食事会の様子。美味しいワインにケータリングの食事。

■ 夏にあったローマハウスの食事会の様子。美味しいワインにケータリングの食事。

■ 男女ともきちっとした服装で参加する。

■ 男女ともきちっとした服装で参加する。

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