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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  36

「3XNの二つの建物 水族館とFNビル」

2013/6/24小野寺綾子 / ヘルシンガー

今年3月の復活祭休暇に、アマー島のカストラップ空港の近くに新しい水族館、別名ブロープラネット(Den bla planet、青い地球)が開館しました。 設計は国内外でいくつもプロジェクトを抱えて活躍中の3XN設計事務所です。
コペンハーゲンの北にあった1934年に創立された水族館は、文化保存指定の建物だったので狭くて、増築が出来ませんでした。 2007年に新しい水族館の設計コンペがあり、最終的に6つ残った設計事務所の中で、3XNがBIGやヘニング・ラ—セン事務所らを抑えて勝ちました。

水族館は開館してたったの10日間で、古い水族館の一年分の入場者にあたる10万人が入館したと聞きました。 今、チボリ公園や動物園のように家族連れに人気の高い娯楽施設です。 ブロープラネットは北ヨーロッパで一番大きく、最新の設備を備えた水族館で、大小53の水槽に20,000の魚類がいるというチャチフレーズです。 銀色に光るアルミで覆われた建物は、形が有機的で、水、風、土を象徴しています。 水や風が大きく渦を巻いているような形です。 道路から建物の入口までなだらかな長いアプローチがあり、アプローチに沿ってプールに水が張ってあります。 入場者は水を見ることで、これから水族館に入るということをすでに視覚的に体験する演出です。 銀色の曲線を描く建物が、水面に写る姿はとても綺麗です。

3XNの建物の特徴は、2011年に設計されたベラ・スカイホテルや銀行、公共施設の建物に見られるように、よく建物のファサードを覆う白い菱形の模様がアクセントに使われています。 水族館では、菱形は建物の全体委を覆う銀色の細かい魚の鱗のような模様になり、目立たなく使われています。

入口を入ると、建物の中は薄暗く、「出会いの広場」と呼ばれる渦巻き形をした建物の中心部にきます。 内部は青い色の照明で統一してあります。 中心部から羽のように5つの主なる展示室が伸びています。 アマゾンの熱帯雨林に生息する魚、蛇の展示室。 フェロー諸島の魚や動物の部屋。 サンゴ礁にすむ動物や魚の部屋。 4百万リットルの海水が入った大水槽の中で泳ぐ鮫や魚群が見られる部屋。 床と天井がガラス張りのトンネルになっている部屋では大型の魚が泳ぎ、人間は海中にいるようです。 水族館はただ魚類の展示だけではなく、2階に子供が水族館で学習体験できる部屋が用意しています。 海水を利用して建物を冷却し、雨水も水槽に再利用する設備も備わっています。 水族館は海岸に建っているので、カフェから海辺に出ると、頻繁に低い位置で空港に着陸態勢に入る飛行機が良く見えます。 水族館は、年間の入場者数を70万人から100万人と予測しています。 営業時間は、月曜日は10時から21時、火曜日から日曜日は10時から18時開館。 入場料は大人160dk(約2700円)と高めですが、ウェブサイトより入場券を買うと割引があり、入場する時に待ち時間がありません。
水族館のサイト:www.blaaplanet.dk

この20年くらいにコペンハーゲンのウアステッド地区は、原野に高架の地下鉄が建設され、沿線にそってたくさんのアパートを始め、学校、大学、公共施設ができてようやく町らしい景観を作って来ました。 これから25年ほどの時間をかけて再開発が始まるのは、コペンハーゲン市内ウスタボー地区のノアハウン港付近です。 1800年代に海運が栄えた頃からできた港で、現在はすっかりさびれて倉庫が立ち並ぶ地域です。 コペンハーゲン中央駅から、S電車で4つ目のノアハウン駅(Norhaven)のプラットホームから、いくつもクレーンが港のあたりに立っているのが見えます。 円筒形の穀類倉庫がアパートに再生されます。 モダンな分譲アパートのモデルハウスもでき、数年後の入居者を募集中です。 将来は、この地域に地下鉄駅が開通します。 アパート群、ホテル、オフィスビルが立ち並び、6000人の雇用者と3000人の住民を目標にしています。

その先陣を切って、2012年12月に、昔ここでグリーンランドから大理石の積み出しがあったので、その名残でマモ—モールン(Marmomolen大理石の突堤)と呼ばれる場所に、FNビル(国連ビル)の建物ができました。 ノルウエーに行く大型フェリーが停泊するすぐ近くにFNビルを設計したのは、3XN設計事務所です。 既存のユニセフの大きな倉庫が取り壊され、一年くらいかけてFNビルが建って行く工事状況が沿線からよく見えました。FNビルは、コペンハーゲン市内に散らばっていたユニセフ、WFP(国連食料計画)、UNFPA(国連人口基金)、WHO(世界保健機関)など6つの国連機関が一か所に集められ、約1800人が働いています。  昨年11月にあった建物の説明会に、3XNの創始者で代表者でもあるキム・ヘアフォース・ニールセン(Kim Herforth Nielsen ) が来て、建物の説明と内部の案内をしてくれました。
FNビルは5階建てで、左右に伸びる8つのウイングが建物の中心に出会うような型をしています。 キム・ヘアフォース・ニールセンは、ニューヨークの国連ビルは、縦長で上下しかなく、それぞれのセクションの交流がなかったので、コペンハーゲンのFNビルは、建物の真ん中に中心となる階段をもってきて、各セクションの人が、建物の階段で出会うような構造にしたと、説明しました。 真黒の階段は、白い内装の中で、まるで巨大彫刻のように大きくうねっています。 3XNの代表的作品ウアステッド高校も、ゆるやかな白い階段が建物の中心に作られていますが、FNビルの階段は黒光りして、非常に強いインパクトがあります。 建物の案内中にキム・ヘアフォース・ニールセンは、黒い階段が完成したのを見るのは初めてと言って、5階から階段の写真を撮っていました。

エネルギー節約のため、建物にソーラーシステムを付けたり、水を使って建物を冷やす装置があります。 雨を集めてトイレに再利用をする設備もついています。 6カ国語の通訳が可能な450人収容の会議室の壁に使われている木は、デンマーク産の木材を使っています。 各階の仕事部屋や一階にある職員用のフィットネスセンターから見える海の眺めが、とてもいいです。 国連の規則で、テロ防止のため地下にパーキングありません。
この建物のある45,000�u土地は海に囲まれた小さい島になり、建物に渡る橋ができる予定です。 FNビルの前の更地に、オフォイスビルができます。

2012年11月にFNビルを見学した時、2013年1月にFNの機関が入居するため、内装はほぼ出来上がっていましたが、建物全体の工事は終了していませんでした。 2013年6月の段階では、建物を覆うファサードの工事が進み、ガラス張りの窓は、3XNの設計事務所の建物に見られるような、白いファサードがリズミカルなアクセントとして使われるような外壁になりつつあります。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

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駐車場から見た水族館全景。

■ 駐車場から見た水族館全景。

■ 駐車場から見た水族館全景。

入口に向かうアプローチに、水が張ってある。

■ 入口に向かうアプローチに、水が張ってある。

■ 入口に向かうアプローチに、水が張ってある。

建物の表面はアルミで覆われ、菱形の文様が建物を覆ってる。

■ 建物の表面はアルミで覆われ、菱形の文様が建物を覆ってる。

■ 建物の表面はアルミで覆われ、菱形の文様が建物を覆ってる。

巨大な水槽で泳ぐ魚を見る観客。

■ 巨大な水槽で泳ぐ魚を見る観客。

■ 巨大な水槽で泳ぐ魚を見る観客。

水族館を上から見た図がT−シャツになって売っている。

■ 水族館を上から見た図がT−シャツになって売っている。

■ 水族館を上から見た図がT−シャツになって売っている。

2012年12月撮影のオスロフェリーとFNビル。

■ 2012年12月撮影のオスロフェリーとFNビル。
2013年6月時点では、手前のガラス張りのファサードは、後方の白いファサードの模様になるように、工事が進んでいる。

■ 2012年12月撮影のオスロフェリーとFNビル。
2013年6月時点では、手前のガラス張りのファサードは、後方の白いファサードの模様になるように、工事が進んでいる。

FNビルが建つ場所と反対側にある倉庫群。円筒形のサイロはアパートに再利用される。

■ FNビルが建つ場所と反対側にある倉庫群。 円筒形のサイロはアパートに再利用される。

■ FNビルが建つ場所と反対側にある倉庫群。 円筒形のサイロはアパートに再利用される。

FNビルの会議場として使われる場所で、建物の説明をする3XN代表のキム・ヘアフォース・ニールセン。

■ FNビルの会議場として使われる場所で、建物の説明をする3XN代表のキム・ヘアフォース・ニールセン。

■ FNビルの会議場として使われる場所で、建物の説明をする3XN代表のキム・ヘアフォース・ニールセン。

躍動する彫刻のような、黒い巨大な階段。

■ 躍動する彫刻のような、黒い巨大な階段。

■ 躍動する彫刻のような、黒い巨大な階段。

吹き抜けになった建物の上から見た階段。

■ 吹き抜けになった建物の上から見た階段。

■ 吹き抜けになった建物の上から見た階段。

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