8月23日にローマハウスは築50周年を迎えます。
50周年の記念行事として、13時から前にローマハウスに住んでいた人を招待して、新旧住民のレセプションがあります。
夕方18時に住民が自分の食事を持ち寄って食事会をします。 食事の持ち寄りパーティーはデンマークではよくあることです。
私が住んでいる通りの8戸の住民が、夏の夕方年に一回道路に椅子、テーブルを集めて夕食をする行事がありますが、この時も各自飲み物や食事を持参しています。
元自治委員長が書いたローマハウスの本も出版される予定です。
設計者のヨーン・ウッソンは4月5日に90歳になりましたが、健康上の理由から隠居生活をしています。
同じくルイジアナ美術館も今年開館50周年を迎えました。
ルイジアナはコペンハーゲンの北35km、電車で約40分のホルムべックにあり、ウアソン海峡を挟んで対岸にスウエーデンを眺める大変風向明媚な場所に建っています。
50周年記念にあわせて女性ジャーナリストが書いたルイジアナの50年を回顧した本が出版されました。
400頁の本はルイジアナを創立したクヌート・イェンセンを中心に彼のカリスマ的な人柄、彼含め大学でアカデミックな美術史を専攻していない美術館の役員たち、
人気を博した展覧会や活動内容など、この50年間に起こったことを取り扱っていてとても面白いです。
特に1950年代、美術館の草創期や1990年代後半にあった館長の世代交代をめぐる裏話がおもしろいです。
ルイジアナの創立者、Knud Jensenクヌート・イェンセン(1916−2000)は、上流階級出身で祖父の代で成功を収めたチーズ卸業をやりながら、美術に興味を持っていました。 戦争中は、ナチドイツ思想に傾倒したこともありました。(これは汚点として本人が死ぬまで語りませんでした) 美術館を始めるため1955年にルイジアナの農場館が売りに出ているのを知り、銀行からその当時で百五十万クローナ(約三千万円)を借りて館を買いました。 銀行との約束では、美術館が破綻した場合ホテルになるはずでした。
なぜ美術館がルイジアナと呼ばれるようになったのか、ルイジアナの名前の由来には有名な逸話があります。 1855年に館を建てた国王の狩猟官長Aleksander Brunアレクサンダー・ブルンは三回結婚しましたが、そのいずれの女性の名前がルイーズという名前がでしたので、 農場館はルイジアナと呼ばれるようになりました。
最初美術館を作る時、クヌート・イェンセンはウッソンに設計を依頼しましたが、ちょうどシドニーのオペラハウスに建築で忙しく断られました。 かわりに当時36歳だったVilhelm Wohlertヴィルヘルム・ウオレアット(1920−2007)とヨーゲン・ボーJoergen Bo(1919−99)に建築を依頼しました。 ルイジアナの初期に建てられた建物は、デンマークの建築が日本の伝統建築から影響を受けた代表作として、真っ先に例に取り上げられる建物です。 これはヴィルヘルム・ウオレアットが米国カルフォルニア・バークレー大学で教えていた時、 サンフランシスコなどで日本の伝統建築から影響を受けたアメリカの建築を見ていたからです。
美術館の本館は元農場の建物です。 設計にあたってどのように古い建物と新しい建物を調和させることが難しかったようです。 美術館の特徴のあるガラス張りのジグザグ回廊は、建築費が十分でなかったためにガラス張りになりました。
クヌート・イェンセンは亡くなる前に、隠居しているウッソンに庭に高い塔を設計して欲しいと依頼しました。 この計画に対し美術館のあたりが高級住宅地になっているので、地域の住民は周囲の景観を損ねるという理由で反対する人、 ウッソンが作るのだから賛成する人と意見が分れました。 結局ウッソンが身を引いたことになり、計画はお流れになりました。
ルイジアナは私立の美術館で、最近までデンマークで一番入場者が多い美術館でした。 アーケン、アロスなど新しい美術館がルイジアナのコンセプトを模倣して目標としています。 1950−60年代当時の国立美術館は閉鎖的で、抽象絵画など現代美術に関心がなかった時から、ルイジアナは国際水準を目指した美術館作りをめざし、 静かなデンマーク美術界を引っ張ってきました。 成功の秘訣は、美術館に創始者クヌート・イェンセンの強い個性があふれていることです。 収集作品はヨーロッパ、アメリカの現代美術ですが、展覧会は現代美術をはじめ写真、デザイン、建築とあらゆるジャンルを取り扱っています。 開館当時から最近までクリスマスを除いて年中無休でした。 今年の2月から月曜休館になりましたが、夜は10時まで開館を延長しました。 毎週水曜日はジャズ、クラッシックの音楽会をやっています。 美術館の会員は6万人もいて、ヨーロッパの大美術館と匹敵する数です。
カルダー、ヘンリー・ムーアを始めたくさんの彫刻が、他の彫刻を邪魔しないよう庭に置かれていています。 カフェテリアから四季折々変化に富んだウアソン海峡を眺めるのも楽しいです。 1980年代に増築された建物はほとんど地下にありますので見晴らしが良く、彫刻と海、建築と庭園など美術館のどこを取っても絵になる風景です。
私が最初にルイジアナを訪れたのは20年も前のことで、館長と交友関係にあった大岡信が書いたルイジアナ訪問のエッセイを読んだので美術館を見たくなりました。
50周年記念として、郵政局から記念切手が発売になりました。 特別展覧会セザンヌとジャコメッテイ展が7月中旬まであります。 今年の秋には13年ぶりで日本の展覧会があります。 これはドイツの美術館と共催で北斎漫画から現代のアニメいたる「まんが」展です。 世界の有名建築家が設計した(これからする予定)の美術館の写真展もドイツから巡回中です。
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写真は全て小野寺綾子氏撮影
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