デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り 　1

ローマハウス
ヘルシンガーは、コペンハーゲンから海岸沿いに約45ｋｍ北上した町で、シェークスピアの戯曲「ハムレット」の舞台になったクロンボー城があります。　
スウェーデンとデンマークがウアソン海峡を挟み一番接近した所です。　海岸に突き出すように建つ城から、約5kmの対岸にあるスウェーデンのヘルシンボーが良く見えます。

ヨーン・ウッソン（Jorn Utzon 1918）作の建物は建築案内書でキンゴーハウス(Kingohusene)と紹介されていますが、別名ローマハウス（Romerhusene）という名前で知られています。
住宅のある地域は、デンマークの作家の通り名がいくつもあり、キンゴーハウスの名前になった通りは、１７世紀の詩人トーマス・キンゴーにちなんでいます。

ローマハウスという名称は、古代ローマの建物のように家の中に庭があるからと聞いています。
年に数回発行される自治会の会報の中で、住民はローマハウスに住む人をローマ人と呼んでいます。
６０戸の建物は、１９５６年から１９６１年にかけて３期に分けて建てられました。 起伏のある元牧草地に６０戸の住宅が、グループごとに少しずつずれながら並んでいます。　建物の外見はモロッコの住宅より、台所やトイレの窓に掛かる格子窓は日本、建物のアクセントになっている段差の壁は中国からと、世界中を旅したウッソンがインスピレーションを受けたものが入っています。
中庭からみると、１９５０年代に日本の家屋から影響を受けた平屋の家の特徴がよくわかります。　建物は道路側に背を向けた形で、部屋の窓は庭に向かって開かれています。　玄関から入ると、居間の大きな窓から差し込む光がまぶしいです。

建物の大きさはすべて同じ間取りで、同じ大きさです。　車庫を除いて約１００平方です。　家族４人ですと家は少し狭いので、車庫を部屋に改造している家が多いです。

ローマハウスは１９８７年に国の文化保存建物指.定になりました。　指定を受けると、内部の改造は自由ですが、建物の外見を変えてはいけまん。　窓の取替えや車庫を改築するには国の文化遺産保存部の許可が必要です。　増設できる部分は、建物のごく一部に限られています。
屋根の葺き替え窓の取替えなど家の修理に掛かった費用は、収入から差し引くことができます。　固定資産税を支払う必要はありません。築５０年もたつと、やはり屋根が傷みます。　屋根瓦は現在入手不可能な種類の瓦です。　数年前ローマハウスの姉妹住宅であるフレデンスボー住宅は、屋根を新しい瓦で葺き替えをしましたので、ローマハウスはその住宅で不要になった瓦を買い取り、葺き替え用に保存しています。

私は１９９０年初めからこの住宅に住んでいます。　四季折々の佇まいが美しく住んでいて飽きません。　庭の壁が低いので、借景のように共同緑地の丘に立つ住宅が眺められます。　黄色いレンガの壁に朝日が当ると、その色調はモランディの絵を思い出させます。

春、秋に２回住民が親睦を兼ねて共同緑地の木の手入れをした後、昼食会をします。　住居が６０戸もあり、住んでいる道が違うと、なかなか近所以外の人と話をしたりすることはありません。　年一回の総会や２月には子供や大人を交えてフェステランという樽たたきの行事、６月の夏至祭には、焚き火を囲んで歌を歌ったりと、住民参加の行事があります。
６０戸で作る自治会の運営委員の中に、HP部門があり、ローマハウスのHPを作っています。英語、デンマーク語がありますので、ご覧ください。　　　 www.romerhusene.dk 

数年前ウッソンは長年住んだスペインのマジョリカ島から、ヘルシンガーへ戻ってきました。
最近は健康上の理由から、人前には姿を見せません。

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写真は全て小野寺綾子氏撮影
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