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スウェーデンの生活環境について

筒井英雄

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スウェーデンのハウジングは、イギリスのガーデンシティーの理論を多く取り入れてスタートしたと言われています。
第一次、第二次大戦への不参加を貫き、その間に得た富がスウェーデンハウジング発展の経済的な背景にありますが、社会民主労働党の長期にわたる安定した政策も大きな要素になっています。  1930年、ストックホルム住宅博覧会を契機に住宅建設が始まり、1950年のベーリングビーが本格的なハウジングとして知られています。
居住人口に応じた生活関連施設(ゴミ置き場、駐車場、子供の遊び場、その他)はもとより、教育施設と高齢者福祉施設が最重要施設として計画されています。
国家プロジェクトとしてのハウジング事例は立地と規模やその目的により様々ですが、今回はその中から最近の「ハンマルビーのエコタウン」 「チュウリンゲのガーデンハウス」 「シスタのIT企業・教育施設を中心としたハウジング」の事例を紹介したいと思います。


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 エコタウンのHammarby (ハンマルビー・ショースタッド)


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Photo : Quoted from 「Hammarby Sjostad」


ハンマルビーの建設は写真左側のゾーンから1994年に始まり、海に迫り出した水辺には  葦の茂るグリーンで取り囲まれ、その中をプロムナードデッキが設けられ,所々に休憩所もあり快適な散歩道となっています。
葦は水質浄化に役立ち緑化都市景観としても美しい。  海に突き出た3段の円形デッキは日光浴と夏に海水浴の飛び込み場にも利用されています。
写真右側はその後建設されたゾーンで、ボートの繋留された水辺のプロムナードと住戸の中を上下に計画されたメインストリートで構成されています。 人工水路や緑道はこの写真では未完成です。
写真下の施設が事務所、ほぼ中心にセンター施設,その奥にレストランなどがあります。 右側の住棟は配置を僅かに傾斜させ、少しでもバルコニーから水辺が見られるように計画されています。


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ハンマルビー・ショースタッドはストックホルムの中心から地下鉄で15分、市の南側に位置しています。 以前は港湾工場跡地でしたが、敷地の環境整備を行い、水辺のエコロジカルな住環境に生まれ変わりました。  各住戸は出来るだけ水辺が見られるように計画され、屋外での生活も楽しめるようバルコニーも可能な限り広く取るように計画されています。
海辺には沢山のヨットが係留され、散歩道には自由に休憩できるよう店舗や休憩所が設けられています。計画全体が完成すると、居住人口は3万人にのぼります。
このハウジングは1997年度のヨーロッパの環境大賞を受賞しました。


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メインストリートになる歩行者空間は、緑道と人工的な水路で構成されています。
管理センターと教会を中心として、両サイドは教育施設とレストランが配置されています。
1階の住戸は通路面より1mほど高いレベルに計画されており、歩道から3〜4mの距離にも関わらず植栽とレベル調整で外部からの影響がないよう計画されています。


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バルコニーはアウトドアを楽しむ重要なスペースで、日光浴やパーティーに利用されます。
どこの家でも自分の好みの花が飾られ、自分が楽しむだけでなく、道行く人々をも楽しませる 都市景観としても大変重要な役目をしています。


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ハンマルビーは子育て住戸から高齢者の生活まで対応出来るユニバーサルなデザインであり、福祉国家に相応しい環境になっています。
老人ホームはセンター施設に近い、町の中心部に位置していますので介護人付きで自由に散歩が楽しめます。


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水路の水は雨水を利用しており、緑化の散水や雑排水に利用されています。
この計画では、エコタウンで住戸の生活排水までもが分離されており、住戸の汚水もゴミもバイオエネルギーに変換されて綺麗な水だけが海にもどされます。


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写真左側のガラス張り建物が、中心施設です。 この施設は、案内所・集会所・管理センター、ゴミ収集施設(地下)に利用されています。
ハンマルビーでは各住戸より出た家庭内のゴミを地下のチューブで吸引収集しています。それらは分離され、燃えるゴミは焼却して熱エネルギーとなり、地域暖房の熱源として利用されています。 生ゴミは別施設に移してバイオエネルギーに変換し、残りかすは肥料にして有機栽培の土にかえします。
建物の屋上や壁面には、ソーラーパネルが取り付けられており、少ない太陽光も利用しています。  写真手前に見える8つの箱はセンター施設の地下に吸引されるゴミの吸引口です。
ここでは生活に関わるエネルギーを循環型にとらえ、エコロジカルな生活環境を実現しています。



 Tulinge (チュウリンゲ)のガーデンハウス


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別名ガーデンハウスと呼ばれるように接地性の高い集合住宅です。
小屋裏付き2階建てが中心で 戸建て住宅もあり、庭との結び付きを重視したヒュウマンスケールな低層集合住宅です。  航空写真で見られる範囲は第1期工事分ですが右上方向に現在の4倍位増築され、将来は600戸で1500人位の規模になります。
店舗や教育施設は将来計画の中に含まれ全体が完成すると カラフルで緑豊かな楽しい住環境が出来ると思います。


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写真正面に見える連棟建物が中庭と外部倉庫付きの建物です。
述べ面積は106�u、屋根と外壁の色で区分されている部分が1住戸の範囲です。
手前の赤色の外壁の建物はガレージとゴミ置き場です。 その手前はオープンスペースですが ベンチや子供の遊び場があり、敷地境界は僅かな植栽で区分され庭の繋がりを重視しています。


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連棟建物の専用庭部分、黄色い外壁部分と左側の倉庫を含め1住戸分です。
小屋裏付き2階建てになっていて専用庭の面積少ないが外部倉庫で上手にプライバシーの高い中庭を作っています。  手前に見える木製の柵が道路面ですが柵の高も非常に低く抑えられています。


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小屋裏付平屋建てL型プランに外部倉庫付きの住戸で、全体を低く抑え黒色で統一されています。
外部はオープンテラスと専用庭付きですが専用部分はあまり広くなく、共用部分は充分な広さで中木が植栽され、計画建物を包み敷地全体として緑豊かな計画になると思われます。  又、各住戸にはマントルピースがありその煙突のデザインがユニークなスカイラインを表現しています。



 Kista (シスタ)IT関連施設を中心としたハウジング


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IT関連の研究教育を中心としたハウジングでストックホルム中心より地下鉄で 北西20分位の所に位置しています。
写真左下の三角型をした高層棟がシスタサイエンスタワーと呼ばれランドマークとして計画されています。 地下鉄の線路沿いに3〜4階建てのセンター施設がありその上に中層の高齢者住戸もあり、シヨッピングモールに接続されています。
写真左上が研究、教育施設郡その下が関連施設になっています。 IT関連施設の廻りは中層の住戸郡で居住人口は25.000人位の中規模の住環境を形成しています。


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シスタのオフイス棟の玄関ホールに展示されたシスタ全体模型です。
赤色外壁模型がIT関連施設で写真中心に見られる三角型の建物がシンボルタワーとオフイス棟、その他は中層5〜6階の住戸で構成され施設廻りに配置されています。


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シスタのセンター施設は3〜4階建ての建物で、1階はアクセスの玄関と駐車場、倉庫、2階以上がセンター施設です、吹き抜けシヨッピングモールの両サイドは店舗が並び至る所に光の注ぐ ホールがあり、カフェやオープンスペースになっています。
吹き抜けのホールは壁面の蔦や中木の緑を配置して長い冬でも自然が感じられように計画されています。


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ショッピングモールに接続された中層の高齢者の住居から、高齢者1人で介護人なしでシヨッピングが楽しまれます。
車椅子での老人や杖を持った高齢者も見られて、IT関係者だけでなく 高齢者も自由に日常生活が楽しまれるように計画されています。  最近の高齢者住戸は街の中心近くに配置し、一般の市民生活の中に何時でも参加出来るように  計画されています。

特記以外、写真は全て筒井英雄氏撮影
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